京浜東北線と、ガラスの天井と。

今朝、通勤時に京浜東北線のいちばん前の車両から

運転席を見たら、女性の運転士さんがいました。

運転士で女性は珍しいなと思った直後に、

あれ?と感じたことがあります。それは、

「女性の運転士は珍しい」

この発想自体がすでに男社会の呪縛を

象徴している発想なんじゃないかということでした。


同世代の男性に比べれば、女性の社会進出に理解が

あるほうだと思っていたので、自分の中に

いまだにそういう発想が根付いていることに

少しばかり、落胆をしたのでした。


思えば1986年に男女雇用機会均等法が施行されて

ちょうど30年です。むしろ、まだ30年というべきでしょうか。

諸外国に比べれば日本は宗教的な拘束もなく

女性の権利については寛容な国という印象ですが、

女性が男性との区別なく社会進出できることが

きちんと法律でさだめられてからまだ30年あまりなのです。

道のりはまだまだ遠いのだと感じます。


我が家では2人とも仕事をしているので

掃除・洗濯は私、機械の修理や電化製品の取り付けなど

はカミさん。食事は作れる人が作る、

(週のうち4日くらいは私が作ってますが)

という風になっています。

特にこうしようと決めたわけではなく

一緒に暮らす間に、お互いの得意な分野を

担当するというように自然となっていきました。

自分としては自然なことだと思っていましたが

もしかしたら、どこかでそれは不自然な

ことだと感じているのかもしれません。

だとすれば私は

大変、欺瞞に満ちた人間だということになります。


アメリカ大統領選で敗れた

ヒラリークリントン氏は支持者に向けた

敗北宣言演説の中で


私たちはいまだに、もっとも高くて固いガラスの天井を

打ち破ることができてはいませんが、

いつかきっと、誰かが実現してくれることでしょう。

その時期が、私たちが考えるよりも早く訪れてくれることを願います。


と延べました。「ガラスの天井」とは

女性の社会進出や昇進をはばむ社会的障害を

指した言葉ですが、お互いがお互いを見つめあい、尊重しながら

暮らしていかなくては成立しないと訴えてかけているはずのこの社会は、

私と同じように、やはり欺瞞に満ちているのでしょうか?


10年以上前に電通出身のメディアプロデューサー

吉良俊彦さんの講義を宣伝会議の講座で受けたことがあります。

吉良さんは電通時代、主に雑誌局を中心に活躍されており

雑誌メディアとマーケット分析に関する著作も多い方です。


その講義の中で、女性向け雑誌と男性向け雑誌の

コンセプトや編集にまつわる決定的な違いについて語られました。

それは、

女性は年単位で自分の人生を見直す。

男性は40歳を過ぎてから人生について考える。

というものでした。


女性向け雑誌は興味の志向性よりも

細かいライフステージに応じた、ターゲット設定で雑誌が作られます。

ある年齢を境にガラっとファッションや興味の志向が変化するのです。

例えば、高校生→ギャル 大学生→コンサバ 社会人→ナチュラル系

と一見すると、節操がないように思えますが

女性は年単位で自分のライフスタイルを見直すため、

このような変化(進化?)がごく自然に行われます。

ところが男性の場合、志向性の根源は

子供~青年期にいたるまで大きな変化はないそうです。

子供のころ好きだったことが大人になっても好きだと

いう人は多く存在します。

ただ、40歳前後になってやっと個人の生き方を振り返り始め、

社会的責任やライフスタイルとのバランスを考えだします。

男性誌としては一大ブームを巻き起こしたLEONなどもそうですが、

どこか、マニアックなテイストの雑誌が比較的多いのも

そこに由来します。


雑誌のコンセプトや編集方針はこれらを機軸として

考えられているのだと吉良さんは教えてくださいました。


吉良さんのお話をこうして思いなおしてみると

女性は生理的な側面も含めて

「何度も生まれ変わる」存在なのだなと強く感じます。

前例にとらわれず、今の自分にとっての

最適解を受け入れながら前に進んでいく。

対して、男性は生き方を変えるということと

「死ぬ」ということは同義であり、それまでの

自分を否定することがなかなかしづらいという性質を

持っているのでしょう。


ただ、それぞれの性(LGBTの方含む)には

それぞれの悩みや苦しみがあり、

女性に限らず、それが「ガラスの天井」と

なりえる可能性はあります。


ただ、今朝、私に芽生えた発想を

あらためて思い返すと、「ガラスの天井」とは

ひとりひとりの心の中にある、あきらめや

卑屈な感情や妬み、差別意識が生み出している

実体のないモンスターのようにも思えてきます。


自身が欺瞞と感じること、それを

何となく受け入れ、いつしか

それが社会で自分が生きていくための

あり方だと納得させていく、その行為こそが

「ガラスの天井」を生み出しているのかもしれません。


女性に優しいということは

いい男の条件のひとつなどと言われますが

それは、見方を変えれば女性はか弱い存在だから

優しくすべきだという「正しいあり方」

を無条件に受け入れてしまっているともいえます。


何が私にとっての本意なのかが

ますますわからなくなってしまいましたが

せめて、自分の中の欺瞞に気づいたら

必ず向き合うようにしていこうと思います。


とはいえ、女性には嫌われたくないので

これからも優しく接していきますけどね(笑)。


運転中の無断撮影すみません。。。。

























amuse bouche

湘南ゼミナール 広告宣伝部、広報室のメンバーによる コラムメディアです。 みなさんから 寄せていただいたコラムを 少しづつ、紹介していきます。 日々のクリエイションの中で、 見つけたことや 感じたこと、 考えたことなどを 共有してみませんか。

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